家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。
[2006年12月の介護短歌]
安森敏隆です。
東福寺の紅葉も最後の輝きを見せております。先日、介護短歌の本が出版されましたので紹介します。『介護百人一首』(NHK出版 1300円)です。「これは祈りの言葉である」と言う、すばらしい言葉が帯文についています。私も「序文」で「介護の心と 介護百人一首」を書いています。是非一度読んでみてください。
【十二月の優秀作品】
みぞれ降る冬は来にけりみちのくの小さき町の病める家にも
(評 結句の「病める家にも」が「みぞれ」に呼応しながら、まことによく効いている。「みぞれ」が祈りとなって降ってくれればいいのだが)
立ち寄れば白川静を悼む声看護師ふたり夜の病棟
(評 中国文学の碩学・白川静先生が先日お亡くなりになられ、12月7日に「お別れの会」が京都で行われ、私も出席する。世界中で「悼む声」が聞こえてくる。)
帰りたいその一心のリハビリも音なき悲鳴父の五体に
(評 一心にリハビリに励まれている父の五体のなかに生まれる「音なき悲鳴」が、そのうち、祈りの言葉となって浄化してくれることであろう。)
《その他優秀作品》
からまつの小径の空は青く澄めど介護の道はどこまでつづく
十三夜天上天下われひとり咳き込む母は眠りたまえり
小春日のいちょう並木を母と娘(こ)の車椅子行くコローのように
帰る吾と見送る老母の哀切の差ほど激しく初雪の降る
わがままを放ちて憎きその顔が眠りに転じ老醜あわれ
新築の家に病臥の媼(おうな)入れ最後の孝行と友ははにかむ
木枯らしの悲鳴に混じり響き来るショパンのノクターン母と聞きいる
哀しきはあなたは老いて死に近くわたしは好まぬ長生きを生く
顔じゅうを鼻血でまっかに染めながら助けを呼ばぬ義母よなぜなの
面会の終わりを促すアナウンス付き添うわれに長い夜来る
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介護短歌の選評をされている安森教授の紹介は
⇒ 安森教授プロフィール
