家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。
[2006年11月の介護短歌]
安森敏隆です。
鰯雲もうすれてきて霜月となりました。東山もところどころ色づき始め、これから京都も紅葉の季節になります。前回皆様にもお知らせし、協力いただいたNHK福祉ネットワークで募集した「介護短歌」も全国から何千首となく応募されてきました。「介護短歌」が、介護する人、される人にとって大きな意味を持ち、浄化、慰藉され、さらに発展していけばよいと願っています。このPLC「介護短歌」にも益々、多くの人が応募されることを願っています。
【十一月の優秀作品】
蕎麦打てば村いちばんとうたわれし母のこの指百姓の指
(評 母の「指」に注目し、その「指」を二度、用いることによって、母の強さ、優しさを強調してうたい、母の人生を凝縮している。)
一日の介護を終えし妻を招き吟醸二合の月見を始む
(評 「妻」を中心に介護がなされているのであろう。だが、妻一人だけで介護が出来るものでないことも、よく知っておられるのであろう。
あかまんまと書き出す筆にふるえきて闘病の母句作を止めぬ
(評 「母」も好きな句作をなさっているのであろう。その「筆」のふるえが来たところを捉えて、しっかりとうたわれている。ここから介護短歌が始まる)
《その他優秀作品》
列なして川土手を行く車椅子小春の風にあかまんま揺れ
高名な教授自身が介護の身二重の尊敬で高説を聴く
這えば立て、立てば歩めの子の心、リハビリ中の母の背中に。
カナダから一直線にふるさとへ戻れば母はすでに無意識
「作文」と題した父の直筆は自分に宛てた遺言に似て
午前二時母入院すと電話あり動く術なく始発をひた待つ
病棟の窓の雀の名を呼んで母は始める身の上話
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