介護短歌〜安森敏隆が選ぶ今月の佳作〜

家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。

[2006年8月の介護短歌]

安森敏隆です。
長い長い梅雨がやっとあけました。比較社会学者の鶴見和子さんの50年ぶりに短歌があふれるように出来たという『回生』という歌集を読みました。脳出血でたおれた夜、歌が迸り出たというのです。発病され、倒れた夜の最初の歌は「唇のしびれを感じ『筒井さん、筒井さん』と呼び 起きるあたわず」と言う歌でした。とても自然体で、良い歌です。

【八月の優秀作品】

「すまない」と「迎えを早く」が口癖でそんなことないよと私がんばる
桑原洋子
(評 「すまない すまない」と繰り返し「迎え早く 迎え早く」と何度も繰り返されるのだろう。「そんなことないよ」と言ったとき、お互いに元気が出てきたのだろう。)
富良野には涙をためた人が来るラベンダーの風いやしの大地
谷冨友美
(評 富良野のあの大地にラベンダーが咲き、揺れるとき、自然も人間もともに癒され、「涙」も浄化され清められてゆくのであろう。)
梅雨一転、夏の猛暑と蝉の声、老いの命は峠にかかる
菊池敬一
(評 梅雨から猛暑に変わるとき、さまざまな「命」が厳しい現実に向かう。だが、短い一世を生きるために「蝉」は力いっぱい声を振り絞って鳴くのである。)

《その他優秀作品》

朝六時妻にまかせて家を出る妻は介護を如何に思うや
上島光彦
七夕の希い言葉を捜すうち「感謝」の二字が熱く広がる
八木陽一
ラストチャンス!建設部長に昇進し父の介護も優しくなりぬ
佐藤晴彦
小雀は土に腹這い身を縮むその姿こそわが身と母は
花村紫苑
ジャガイモの千余の花列丘を登り空に達して白雲となる
本間耕作
草引けば木雫散らす風さやか介護の疲れ薄れゆくなり
高橋芳樹
季節ごと模様替えする母の部屋今日あかあかと百日紅咲く
中山雄二
朝が来て夫を電車に見送ってさあ介護だよ気合を入れて
小寺美代子

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介護短歌の選評をされている安森教授の紹介は
安森教授プロフィール