家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。
[2006年3月の介護短歌]
安森敏隆です。
梅のつぼみも開き始めました。「介護短歌」の他にやっている「城崎百人一首」の締め切りも近づいてきました。昨年は、こんな歌が「優秀作品」になりました。「リュウマチの我が手ゆっくり解き放つ城崎の湯に未来(あす)がきらめく」(辻 光)。温泉に浸かって、手や足を解放することで、「未来」がきらめくという。温泉も、57577の短歌も明日への活力と慰藉をあたえてくれるのだと、思いました。「介護短歌」の原点も、活力と慰藉です。
【三月の優秀作品】
若き日より交流薄き弟と危篤の父の前で打ち解く
(評「危篤の父」が、弟と自分を仲介してくれたのでしょう。とても感動しました。)
明日あると鉛を抱いて床につく目覚めて今朝は光に生きる
(評 鉛のような現実があろうとも「明日」があることを、教えてくれる力強い一首。)
亡き人の手植えしあまたの水仙にいろとりどりの春の雨ふる
(評 つんつん伸びた綺麗な水仙に在りし日の「人」が重なっ見えてきたのです。)
《その他優秀作品》
まんまるい顔と心の句友逝き義母の許可えて明日追悼句会
支えられ病床(ベッド)に休む日々終えていざ再びの絆綱引き
天窓は長き廊下のオアシスかリノリウムの空杖青く染め
農業と消防ひとすじ生きてきた兄の叙勲に老母と涙す
この母を見送る大事に恵まれておのが余生ぞ綺羅となりぬる
凍てる夜やハチミツひとびん買いに出る私の背中にありがとさんの声
特急の背に困憊の身を埋め介護帰りの嫁御や哀れ
叶うならいまいちどだけと母は言う夏の富良野のラベンダー畑に
神戸より涙こぼるるFAXあり介護短歌の仲間になりたしと
病室に付き添う老父の節くれの指は器用に折り鶴を折る
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