介護短歌〜安森敏隆が選ぶ今月の佳作〜

家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。

[2006年2月の介護短歌]

安森敏隆です。
寒い日が続いております。京都も、ときどき粉雪が舞います。こんな日は、「おかあさん、おかあさん」と九十歳をこえた亡き義母の声が雪の中から聞こえてきます。「おかあさん!おかあさん!」と呼びている今日のははもホントの母」

【二月の優秀作品】

チンチンと鉄瓶の鳴る温い午後もう永くない父を看ている
阿部裕太
(評 下の句の「もう永くない父を看ている」と言うまことに冷静で過酷なぐらい客観的な捉え方と、上の句のあたたかさが呼応して良い歌になっている)
デイケアの車が角を曲がり行く男女の客みな仏の笑顔
小寺美代子
(評 「仏の笑顔」と、よくとらえて詠っている。更によく見ると、様々な顔が見えてくることだろう。デイケアは、「デー・ケア」とも表記する。)
頭を低く一日の終わりを祈りたるあの神々しさもわが母なるや
八木陽一
(評 介護の日々、様々な顔に出会われることであろう。一日の終わりにであった母の「神々しさ」もホントの顔である。)

《その他優秀作品》

元旦の大海原に赤み射し今年の生命いま始まりぬ
半崎勝治
もう三日帯広川は吹雪けり逃げ場とてなき吾と老母と
佐藤晴彦
豪雪の恐怖におののく茶の間にも朝青龍来て老父を慰む
高橋英夫
屈強の男たのんで雪下ろす一回五万、年間二十万也
玉上之夫
丹沢の山ふところの福地蔵 亡き父のごと生き母のごと
古城暁
背を丸め目を閉じ声なくうづくまる1月の病院に我も溶け込む
中西克彦
病室はむなしき春の暖かさ闘病の父帰宅をあせる
本間耕作
粉雪舞う露天の出湯に身を放ち今只今の至福に酔いぬ
花村紫苑
ケータイのカメラに写る在りし日のリハビリの父いたましきかな
桑原洋子

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介護短歌の選評をされている安森教授の紹介は
安森教授プロフィール