家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。
[2006年1月の介護短歌]
安森敏隆です。
戌年の今年もあけました。
・けさも鳴く親犬の声おやみなく太古のこゑ(声)のやさしさをもて
親犬が、引き取られていった子犬を求めて、何時までも鳴いている声を聞きながら、こんな歌が出来ました。先ずは、「うたいたい」こと「訴えたい」ことをしっかり見つめてあたためてください。その上で、自分自身で発見した「いのち」のうたを詠ってください。そうすると、介護短歌の本質の歌が出来ます。
【一月の優秀作品】
枕辺の赤いちっちゃな靴はいて母は飛ぶらんまどろみの午後
(評 「赤いちっちゃな靴」は、母へのプレゼントのものか、母の愛用していたものか、それともシンデレラの靴か・・・と色々想像される。微睡みの中で、それを履いて母は、空を飛んでいるのであろうか。)
編み棒で無心に糸玉ころがしぬ赤ちゃん返りの母不憫なり
(評 「編み棒で無心に糸玉ころがし」て、赤ん坊にかえっている母の様子が目に見えるようである。こういう姿をうたうことによって母の尊さも見えてくることだろう。)
あんたまた私を捨てて逃げるかと背に怒声聞く帰京の夜に
(評 この母の「怒声」のきびしさの彼方に、喜んでくれる母の優しい声も、介護を続けている限り、また聞くことが出来ることだろう。)
《その他優秀作品》
若き友のまさかの悲報に仰天す母の介護の真っ只中に
あかあかと湾にしみいる朝日かな今日一日の無事故を祈る
宿命を受け容れ生きて九十年病床ニ尺今朝も雪積む
亡き父の喪中はがきに呼応して先様からも悲文届けり
手伝ってあげよと言いつ旅立ちぬ今こそ恋しとび込めぬ胸
恐ろしき夢に目覚めて外に出れば正義の鎌か山月白し
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介護短歌の選評をされている安森教授の紹介は
⇒ 安森教授プロフィール
