家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。
[2005年10月の介護短歌]
安森敏隆です。
谷川 正さんと布見子さんの追悼・介護歌集『息子へ』(青磁社 2500円)が、毒蝮三太夫さんの帯文をいただいて九月に発行された。息子さんの七回忌を前に歌集を出されたのである。谷川正さんは、息子さんが平成元年十二月三十日に、自動車事故で入院されてから、「短歌」を創り始められた。まさに、私が提唱した「介護短歌」そのものであった。二人のこのあふれる「いのち」の歌は、息子さんである弘さんへの愛のプレゼントであり、そしてまた弘さんからの賜物としての贈り物ででもあろう。是非、皆さんにも読んでいただきたい。
【十月の優秀作品】
背広着て笑顔の営業なし終えて秋の窓辺の介護にもどる
(評 介護すると言うことは、一日のうち何度も自分の姿を変えながら、現実に対応していくことでもある。そこのところを見事にうたっている。)
悔いのない介護などなしわが母よ夫(つま)を失くして今日百ケ日
(評 いくら介護を尽くそうとも、これで良いと言うことはない。そこのところが、初句二句でうたわれている。)
過不足のなき献身の見事なる鳥海看護士嫁ぐと聞いて
(評 この歌は、初句二句で「過不足のなき献身の」とうたう。「鳥海看護士」の固有名詞も効いている。)
不正義の福祉現場を告発しわがリハビリ師故郷へ帰る
(評 福祉の現場では、いろいろなことがおこるのだろう。心に、いたく響く歌である。)
己が身の晩節染めし烏瓜その完結を母にも与えよ
(評 先ず、上の句で「烏瓜」をうたい、その見事なまでの熟れぐあいを、下の句の「母」に託そうと願ってうたわれたもの。)
《その他優秀作品》
枝豆をゆでてはじいておろし和えこの手間ひまのおふくろの味
叔父望み墓石の脇に彫られしは刈干切唄九州男児
秋の夜や咳こむ老女背はやせてさすりつ祈りつ娘さん哀れ
欲薄き老に捧げる敬老の花いっぱいを暁に摘む
なにくそと汗水たらし汚れ物洗う姿にひまわり笑う
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