介護短歌〜安森敏隆が選ぶ今月の佳作〜

家族を介護する日々の苦しみや哀しみ、喜びを五・七・五・七・七の言葉に託した「介護短歌」。自分の目で見、耳で聞き、肌で感じたことを素材にし、思いついたことを素直に表現した「介護短歌」は、NHKテレビや雑誌等で大きな反響を呼んでいます。
ここでは毎月一回、自らも介護の経験を持ち、介護短歌の火付け役となった安森敏隆さんがみなさんから投稿された「介護短歌」を紹介し、全国の介護家族の心を結びます。

[2005年8月の介護短歌]

安森敏隆です。
頃日、谷川正さんと布見子さんから、息子さんの7回忌をまえにして、歌集を出したいのだが、と相談をうけた。私が始めて、谷川正さんに出会ったのは、「介護百人一首」(雑誌『京都・滋賀の介護医療』)の募集をとおしてである。「臥す吾子(あこ)の髭そり口をぬぐいつついつの日か父と意識してほし」(谷川正)という歌であった。私は、この歌をみたとき、こういう父と子、母と子の「介護」の歌もあるんだなと強く感動した。そして、意識をうしなった吾子へむかって父と母が五七五七七の短歌を通して思いを伝え、心臓の音を聞き、交感し、よみがえらそうとしている。まさに、白川 静先生(中国文学・文字学)の言われるところの、神に「訴(うった)える」という歌の原点がここにはある、と思ったことだった。

【八月の優秀作品】

ひさびさに琴ノ若関快勝す喜ぶ父は今は亡けれど
佐野史彦
(評 幕内最年長の琴ノ若の踏ん張りは、何ともみごとである。喜ばれていた在りし日の父親の様子と生き方まで見えるような歌である。)
筆談の紙みせてあっそうかうなずく母に吾もうなずく
上田保子
(評 介護の苦労の日々の中での、楽しそうに筆談されている様子が、目に見えるようである。)
俗名は彫らんでもよしと石工言う新し墓誌に夏雲わたる
丹沢悟
(評 何ともあっけらかんとしているようで、意味深長な歌である。最後の「夏雲わたる」で、世界が開ける。)

《その他優秀作品》

庭すみに母の遺品のゲートボールいのちのごとく置かれてありぬ
山広静明
一日を美瑛の雲と遊びたり一瞬の彩ジャガイモの花
佐藤晴彦

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介護短歌の選評をされている安森教授の紹介は
安森教授プロフィール